自治体職員オープンデータ研修@札幌

10月1日に開催された、自治体職員オープンデータ研修に参加したカキザキです。

当日は主催者のVLED、株式会社三菱総合研究所の村上さんからのオープンデータ概論でスタート。 「データ活用で変わる社会」と題して、データ活用に取り組まなければいけない社会背景や活用による効果について説明がありました。

分かりやすい事例として、「ブラックジャックによろしく」の作者である佐藤秀峰氏がこの漫画をオープンライセンスにした件が紹介されました。2次利用可能な形で公開されたことより、「ブラックジャックによろしく」は、一時、アマゾンで無料で見ることができるようになったほか、2次利用が積極的に行われ、様々な広告媒体などで漫画の一部分が使用されることに。

その結果、この作品に触れる読者が増加して、佐藤さんのその他の作品の売り上げが増え、翌年のロイヤリティ収入が約7,000万円ほど増加したとのことです。

これは、コンテンツに魅力があればオープンデータは爆発的に拡がることを示唆しており、なぜ保有しているデータを2次利用可能な形で公開しなければならないのか、という問いに対して、分かりやすい答えになるものと感じました。

そのほかにも、オープンデータとは、データ保有者とサービス提供者の分離であり、これによりサービスの変化(「情報の2次利用」「予測・予防」「マスから個」)が起きている実例として触れられたものは以下のとおりです。  

①東日本大震災後に東京電力が電力需給情報をオープンデータにすることにより、スマートフォンやデジタルサイネージ、ヤフーのトップ画面に情報が提供されるようになった例

②アメリカの警察に導入されている、過去の犯罪実績を分析してパトロールする対象を決める犯罪予測サービス「pledpol」やニューヨーク市の消防局が建物の築年数やスプリンクラーの設置状況等に加えて、空き家かどうかなどの情報を分析して防火対策を講じている例

③アメリカの自動車保険「PROGRESSIVE」では車に搭載したセンサーで走行履歴を分析して個別の情報を収集することにより保険料を算出するほか、呉市ではレセプトデータを活用して個々の住民へジェネリックへの切り替えによる医療費減額提案を行うことによって、医療費を1億円程度削減した例

様々な事例の根底にあるのは、全て役所でやるという自前主義からの脱却であり、これにより、行政においてはコスト削減、住民においては利便性向上、企業においてはビジネスチャンス、というオープンデータの推進に取り組むことによる効果を、既に実証されているサービスから確認することができました。

続いて、SIM熊本2030の体験です。

「SIM熊本2030」とは、熊本県庁職員の自主勉強グループ「くまもとSMILEネット」が平成25年8月から約5ヶ月で自主製作した、2030年問題(日本の総人口の1/3程度が65歳以上の高齢者となるもの)を体感する「対話型自治体経営シミュレーションゲーム」のことです。

ゲームを通じて、今後直面する課題について、対話の中で解決策・方向性を導き出していくというものでした。 SIM自体の受講は、過去にご当地版であるSIMふくおかを2度体験していたため3度目となるものの、一緒に受講したメンバー(自治体職員4名(世田谷区、福井県、倉敷市、秋田市)、東京大学教授、株式会社三菱総合研究所研究員の計6名、今回はお互いの背景を考慮せずに体験するという事務局からの制約があり、SIM体験後に名刺交換、)の属性が異なるため、街の将来について様々な考え方や意見が出てくるのが新鮮でした。

過去2回の経験から、SIMを活用するとすれば、秋田市の財政状況に興味を持ってもらうためのツールとして考えていましたが、オリジナル版を体験し、そのスピード感やあるべき姿から考えるという視点により、自治体経営の在り方を今一度考えるためのツールとして活用することも出来ると感じました。

体験したSIMでは、それぞれの年度に様々な判断が求められ、その際にしっかりとした現状分析と将来予測をしておかないと場当たり的な対応の積み重ねとなり、査定官から判断に対する妥当性を疑われることになります。

そのため、まずはデータを活用すること、さらに、その活用方法を検討する側に多様性があることがプラスに働く、という意味で、今回のオープンデータ研修にSIM熊本2030が組み込まれたものと感じました。

SIMの秋田市版、みなさんと作り上げ、そして、脳みそに汗をかいてみたいですね~。